魅惑の迷路
イランの夏は暑い。
40度から45度まで気温があがることもあります。
日中、10時を過ぎると外にいることは体力を消耗するだけではなく、食べ物も、道路も、プラスチックやタイヤまでもすぐにボロボロになってしまいます。
人間だけではなく、身の回りのものを守るため。そこには魅惑の迷路があります。
どこまでも続く屋根付きアーケード。
巨大トンネル。
洞窟ショッピングモール。
そう、どの街にもひとつはあるバザール。
天井を見上げると、それは見事な装飾で飾られ。天窓からは程よい外光。それに合わせてほどよく入って来る空気は、ほこりや熱を循環させ、バザール内を心地よい空間にしてくれます。
人びとで賑わうバザール。
そこでお店を構え続けることはある一種のプライドを持ち続けることでもあります。
生地屋街、道具屋街、ジュエリー街にスパイス街。
その角を曲がった先に待っているのは、ありとあらゆるものを取りそろえた商店。
より品質の良いものを、そしてその価値に見合う適正な価格のものを探す人びとの目は厳しく、店ごとの差は明らか。好みによって、これを買うのは、このお店。でもこっちを買うのはこのお店。
店主の人柄もみながら、人びとは商品を購入していきます。
生まれ持った商売人の血がそうさせているのかもしれません。
経済制裁で海外とのモノの交流が著しく難しくなった今、それは逆にイラン国産品のもの発展促すことになりました。
器用な指先と、商売っ気と。そして柔軟性を持っているからこそ、今まで使っていた海外製品と同じ、それ以上のものを作り出しそしてバザールでも売る。
今や航空機の部品さえも自前で作れるほどの技術をもったイラン技術者。
そんな人々の生活を支えるバザールにはイラン製のものであふれています。
無くなってしまったものを嘆き、悔やみ、羨むのではなく、それはそれとして前を向き続ける。
まっすぐに前を見る、意思の強さをもった人びとが集まるバザール。
そこに溶け込めば溶け込むほど、不思議と自分自信を奮い立たせる何かを得られるかもしれません。